PP豆知識
ポリプロピレンフィルムについての基礎知識から製造方法・用途についての情報、
またポリプロピレンフィルムについての一般的なご質問についてご紹介致します。
プロピレン(C3H6) ポリプロピレンフィルムは、
透明性・光沢性・耐熱性等に優れ、防湿性も有しており、食品から産業用まで様々な用途に使用されている(包装用)フィルムです。 最も多く使用されている食品包装用においては、特に、安全で衛生的に品質を維持し、効率的な輸送・保存を可能にするなどの重要な役割を担っています。 同フィルムは、石油化学製品を代表する熱可塑性樹脂であるポリプロピレン(Polypropylene)を原料としています。
ポリプロピレンフィルムの原料
原料のポリプロピレンは、次の3種類に大別されます。

①ホモポリマー

プロピレンモノマーを単独で重合したもので、(その成形品は、)剛性、耐熱性、耐油性等に優れています。

②ランダムコポリマー

エチレンやブテンのモノマーがプロピレン中にランダムに共重合したもので、ホモポリマーより融点を低くする事が出来ます。

③ブロックコポリマー

プロピレンモノマーの重合に続き、エチレンやブテン等のポリマーを主鎖中に共重合させるか、微分散混合させたもので、低温での衝撃強度等に優れています。
これらポリプロピレンの特徴を活かし、1種もしくは複数種のポリマーを組み合わせて、フィルムをはじめとする様々な用途に使用され、汎用樹脂として地位を確立しています。 ポリプロピレンは、フィルムをはじめとする様々な用途に使用されています。 使用後のポリプロピレン製品は、再溶融することで園芸用品,雑貨等様々な用途へリサイクルすることが可能です。
また、その主要元素は炭素と水素であり、衛生性に優れ、完全燃焼することで二酸化炭素と水に分解され、有害なガスが出にくく人にも環境にもやさしい素材です。
(株式会社加工技術研究会編「最新ラミネート加工便覧」より抜粋・編集)
当工業会会員各社は、食品衛生法などの法律による規格基準以外に、ポリオレフィン等衛生協議会などが定める自主基準にも適合した製品を提供しています。(非食品用途など一部を除く)
ポリプロピレンフィルムの種類
ポリプロピレンを原料としたフィルムには 無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「CPPフィルム」:Cast polypropylene films)と延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「OPPフィルム」:Oriented polypropylene films),があります。
ポリプロピレンフィルム工業会は、CPPフィルムと逐次2軸延伸(*)されたOPPフィルムとを製造・販売する企業で構成されています。 (*)後述「OPPの製造」をご参照ください。
(注)OPPの一種にインフレーションポリプロピレンフィルム(「IPPフィルム」:Inflation polypropylene films)が有りますが、IPPフィルム企業は幣工業会には所属しないため説明の対象外としています。

CPPフィルム
1)フィルムの特徴と用途

1.CPPフィルムの特徴

CPPフィルムは、溶融した高温の樹脂を急冷して製造するため結晶性の低いことが特徴です。

(1)ヒートシール性に優れる

重ね合わせた2枚のCPPフィルムをヒートシールで溶融させると、 ポリプロピレン樹脂(分子)が混じり合い、優れたシール強度を発現することが出来ます。また、より低温や高速でヒートシール出来るように、低融点のコポリマーを使用した種々のシーラント用製品が上市されています。更にシール強度をコントロールする事により、袋や容器の蓋の開封性を良くしたイージーピールと呼ばれるグレードもあります。

(2)耐熱性に優れている、ボイル・レトルト適性がある

エチレン系シーラントフィルムより融点が高く、耐熱性を要求されるレトルト用途にも使われます。

(3)透明性が高い
(4)絞り成型性がある
(5)防湿性に優れている
(6)フィルムに柔軟性がある
(7)異なる樹脂をブレンドしたり、積層(複合)することにより様々な特徴を合わせ持つことができる

2.CPPフィルムの種類及び用途

(1)単体用

①透明タイプ
CPPフィルムは、一般的に透明性が良く、製袋加工などの機械適正に優れています。
印刷をしないで無地のまま使用するものと、コロナ処理をした面に印刷をして使用するものがあります。
一般タイプのフィルムは、食パン、エノキ茸、雑貨などの包装に使用されています。
パン えのき
②意匠性タイプ
意匠性タイプには、マット調と乳白色をしたものがあります。
マット調のものは、フィルム表面を粗面化することにより、艶消し外観を持たせたフィルムです。
乳白色のものは、白い顔料を練りこんだフィルムです。
食パン、おしぼりなどの包装に使用されています。
マットパン おしぼり

(2)ラミネート用

①一般タイプ
CPPフィルムは、OPPやPETなどの他のフィルムと貼り合わせて広く使用されています。
貼り合わせは、接着剤を使用したドライラミネートや、溶融したLDPE(低密度ポリエチレン)で貼り合わせる押し出しラミネートなどの加工で行います。
ラーメン スナック菓子
②防曇タイプ
防曇タイプのフィルムは、野菜などの内容物から発生する水蒸気によってフィルムの内面が曇ることを防ぎ、内容物を見やすくする働きがあります。
ピーマン、ジャガイモなどの野菜の包装に使用されています。
ピーマン
③蒸着タイプ
蒸着タイプのフィルムは、真空中で溶融させたアルミニウムの蒸気を付着させたフィルムで、アルミニウムの光沢があります。
太陽光を通しにくく、内容物が光劣化しにくくする効果や、印刷と合わせて意匠性を付与することができます。
即席めん、スナック菓子などの包装に使用されています。
冷食 菓子
④レトルトタイプ
レトルトタイプのフィルムは、レトルト食品包装の重要な特性である、耐熱性、シール強度、耐衝撃性等を付与したものです。PETやナイロンフィルム、アルミニウム箔と貼り合わせ、シーラントフィルムとして使用されます。
カレー、シチュー、おでんなどに使用されています。
シチュー カレー
⑤静電気防止タイプ
静電気防止タイプは、粉体等の内容物が静電気でフィルムに付着することを防止したものです。粉末状の内容物がフィルムに付着すると、内容物が取り出しにくいだけでなく、充填時や包装時にシール面に付着してシールトラブルとなることもあります。
ふりかけなどの包装に使用されています。
ふりかけ
⑥イージーピールタイプ
イージーピールタイプはシール強度を調整したもので、易開封(イージーピール)性の蓋材などに使用されます。
容器の種類や用途に応じて種々のタイプがあります。
ゼリー、スープ、豆腐、無菌米飯などに使用されています。
ゼリー 米飯

OPPフィルム
1)フィルムの特徴と用途

1.OPPフィルムの特徴

OPPフィルムは、製造工程で縦横に延伸することで配向結晶が高いことが特徴です。

(1)引張強度が強く、腰(引張弾性)が強い

(2)透明性・光沢性・防湿性が特に優れている
(3)CPPフィルムと比較し衝撃強度に優れている
(4)引き裂き性がある
(5)耐熱性に優れている

2.OPPフィルムの種類及び用途

(1)単体タイプ 意匠性タイプ

意匠性タイプには、マット調、パール調の外観をしたタイプがあります。
マット調のものは、フィルム表面を粗面化することにより、艶消し外観を持たせたフィルムです。パール調はフィルムの製造工程においてボイド(気泡)を発生させたものです。
おにぎり、菓子パン、デザート、ペーパーバッグなどの意匠性を付与したい用途に使われています。
ロールケーキ ペーパーバッグ

(2)ヒートシールタイプ

多層構成で、低融点のヒートシール層を積層し、ヒートシール性を付与したタイプです。
菓子パン、おかきの個包装や海苔包装のような軽包装に使用されています。
タバコ等のオーバーラップ包装は、フィルムの両面がヒートシール出来るようにしたタイプが使用されます。
菓子パン

(3)無静防タイプ

一般的なOPPは静電防止タイプですが、静電防止を施さない無静防タイプもあります。
アルバムや繊維包装に使用されています。
アルバム 衣類

(4)防曇タイプ

OPPの防曇タイプは、野菜などの内容物から発生する水蒸気によってフィルムの内面が曇ることを防ぎ、内容物を見やすくする働きがあり、生鮮野菜や、おにぎりやサンドウィッチの包装に使用されています。
野菜 

■ CPPフィルムとOPPフィルムの物性(一例)

CPPフィルムとOPPフィルムの物性(一例)

製造設備
1)CPPの製造 CPPの製造工程は、主に押出機、T-ダイ、キャスティング装置、巻き取り装置、及びスリッターからなっています。

(1)押出機

押出機の機能はペレット状の樹脂(レジン)を溶融し、その溶融した状態のレジンをダイの所まで定量的に送り出す装置です。

(2)Tダイ

ダイの形状からTダイといいます。Tダイは押出機から供給された溶融レジンをマニホールドで幅方向に広げ、スリット状のリップを通ってキャストされます。リップの開度でフィルムの厚みムラを調整します。多層に成形するマルチダイもある。

(3)キャスティング装置

ダイから押出された溶融状態のシートを冷却ロールに接触させて冷却、固化する装置です。冷却ロールの中は冷却水が循環して冷却ロールの表面を冷やします。

(4)巻き取り・スリット

無延伸フィルムはダイから押出された溶融シートを冷却ロールで固化させ、その後のトリミングロールでフィルム両端部の厚みが不揃いの部分(耳:エッジ)をトリミングしてからコロナ処理を行います。その後、巻取機で所定長に巻き上げます。これをマザーロール(中間スプール)と呼び、必要に応じてこの状態でしばらく保管し(エージング)、添加剤の表面ブリードを待つ(促進させる)事があります。次工程のスリットでは、所定の幅にスリットし、包装されて製品となります。
2)OPPの製造 逐次二軸延伸はキャスティングで冷却固化された原反を最初に縦方向に、次の工程で横方向に延伸し、熱セットする方法です。
OPPのOは、Oriented(=延伸された)に由来します。

(i)縦延伸機

縦延伸機では原反をガラス転移点以上の温度で縦方向に延伸します。 縦延伸機はロール表面速度の遅い低速部のロール群と速い高速部のロール群より構成されています。低速部において、キャスティングで冷却された原反を延伸できる温度まで予熱します。延伸できる温度まで昇温された原反は低速部最後の小径ロールと高速部最初の小径ロールの間で延伸します。

(ii)横延伸機

横延伸機(テンター)は縦延伸機で縦方向に一軸延伸されたフィルムを延伸可能な温度に加熱して横方向に延伸し、その後の工程で熱セットが必要なら熱セットを行う装置です。 テンターには、フィルムの延伸パターンにそってレールがひかれており、その上をフィルムを把持したクリップが走っています。このレールは循環しており、クリップはテンターの入口でフィルムの端をかみ、テンターの中をフィルムをかんだまま走行し、テンターの出口でフィルムを離す仕組みになっています。